ずっと探していたあるものが思いがけず出てきました。「廃棄してしまっんだ」と既にあきらめていたものです。先日、中井に引っ越してきてから初めて(10年ぶりということになります)地下室のトランクルームを止むにやまれず整理整頓することになりました。この10年間というもの、娘たちのお雛様セットの大小数個の箱をはじめ旅行用カバン、ゴルフバック、季節用のディスプレイ額やリースなど何かと便利に「地下にしまっておくよ」と入れ放題だったトランクルームもいよいよスペースがなくなり、全部棚卸して不要物は廃棄するなど空きスペース作りをしたのです。
本棚を整理すべく袋に入った書類の中にそのあるものはありました。あるものとは、30年前に私が書いた「これからの時代をどう生き抜くか―中小企業の倒産回避策」なる小論が掲載されたニッセイ経営情報1978年6月号*です。何度かの引っ越しの度に私の宝物的に連れてきたもの。小論は、僅か原稿用紙8枚ほどのものですが、何故か私の思い入れが強く、機会あるたびにここで述べたことがその後の私の判断の基軸になっていたのです。拙いものですが、以下原文をそのまま紹介させていただきます。データなど当時のまま古いが、エッセンスは少しも変わっていないと思っています。(今、読み返すと若気の至り的な部分があり恥ずかしくなりますが、ある意味時効でもあろうかと。)
*ニッセイ経営情報は、当時、日本生命が中小企業向けに発行していた小冊子のツールで12~13万部を全国に配布していた。
◆◆これからの時代をどう生き抜くか―中小企業の倒産回避策◆◆
昨年は、1日61社、100社に1社が倒産
昨S52年は、18,471社が倒産。S51年の15,641社を抜いて史上最悪を記録した。1日当たり(祝休日を除く)61社が倒産したことになる。これは負債総額1千万円以上のみの倒産件数なので、それ以下で倒産していったものも含めると、実際にはもっと多くの企業が倒産していったことになる。昨年の法人企業数は141万社程。従って、企業の倒産率は1.31%である。100社に1社、1万社に131社が負債総額1千万円以上を抱えて倒産していったのである。
金融緩和期でも倒産多発
本年3月、公定歩合が0.75%引き下げられ、年3.5%となった。これはわが国の戦後公定歩合史上最低の水準であり、”超”低金利時代に入ったことを意味している。S50年4月以降連続8回、合計5.5%引き下げられてきた金融”超”緩和期に現在あるといえよう。
従来は、金融引き締め期に倒産が増加し、金融緩和期に減少するといった倒産発生パターンであった。が、ここ2~3年の倒産多発現象は、金融緩和期におけるもの。従来の傾向と明らかに異なってきている点に留意する必要があろう。
倒産原因―本当は何か
昨年の倒産原因別内訳は、下表のとおりで、販売不振、累積赤字・売掛金回収難などいわゆる不況型原因が53.9%(S51年51.3%)。やはり不況が原因で倒産したと見られているし、思われている。
ここに面白い調査結果がある。某新聞社が倒産会社570社についてその原因を当の経営者自身とその企業に貸し付けていた金融機関に問い合わせたものである(倒産原因を複数回答しており総計100%にはならない)。
それによると、経営者側は、倒産原因の多くを不景気、資金不足、競争の激化といった言わば企業外的要因を挙げている。一方、金融機関側は、その多くを経営の非能率、経営者の不正直・不誠実といった企業内的要因によると指摘している。債権者、債務者といった立場の相違、観点の相違でもあろうが、考えさせられる問題である。
企業は、ヒト・モノ・カネから成っているのは本当か
企業とは、何人かの”ヒト”が集まって、”カネ”を持ち寄り、”モノ”を製造して販売する有機的組織体であると言われているのは、定説のようだ(もっとも最近はこの3要素に”環境”を加えた4要素が出てきているが・・・)。
ところで、このようには考えられないだろうか?すなわち、企業がどこから、どのように、いくらの”カネ”を集め、それを元手に何”モノ”を、どのくらい、どのようにしてつくり、それをどのような方法(ルート)で売り、利潤を最大限に得るようにするかを決めるのは、誰でもない”ヒト”(狭義には経営者のみ、広義には従業員も含む)そのものである、という様にである。
「経営は人なり」は真理
「経営は人なり」-企業は、経営権を握る経営者次第で大きく成長できるし、又衰退して倒産していくこともある。経営者の資質は、次の二つに分けて考えられないだろうか。一つは人格そのもの、もう一つは経営意欲をも含む経営能力である。経営者の人格が低くては、論外である。仮に人格が普通以上でも、経営意欲が足りないとか、意欲はあっても経営的能力いわゆる経営手腕がないというのもよいこととは思わない。
人格・意欲・手腕―これらすべてが経営者には必要であり、又要求されている。その一つが、まして二つが欠けていようものならその企業の、経営の前途は暗いと言わざるを得ない。これらが揃っていることは、経営者個人の信用度が高まるばかりでなく、企業内部においては意思決定者と執行機関との結びつきの基礎となり、外部に対しては取引先や金融機関に対する信用につながると考える。また、識見を高め、経営手腕を発揮するためには常日頃からの絶えざる勉強が必要であり、これを怠ることは決して許されないものであろう。
要するに、経営者自らの姿勢が正しくあることが企業を守る大きな条件である。これが正しくないために企業を倒産に至らせた例は現実に数多くみられる。
倒産回避の戦略とは
企業にとっての”戦略”の必要性を説いた書物が数多く出版され、ブームの如き減少を呈しているのは最近の傾向である(もっとも、戦略の必要性が今特に叫ばなければならないことではなく、企業にとっては常に必要で当たり前のことと考えるが)。
もちろん、大企業同様中小企業にも「戦略」の必要性は大いにある。そして、中小企業にとっての戦略とは、実は「経営者」そのものであると考える。
中小企業の経営者にはいわゆるワンマンが多い。しかし、ワンマン経営(者)が悪いとは決して言えない。企業の成長・発展段階をリスキーな創始期、成長期、安定した成熟期に分類するならば、成長期まではむしろワンマン経営の方が戦略的に良い場合が多い。ただ注意しなければならないのは、ワンマンの眼は主観的になり易く、ワンマンの能力には自ずから限界があるということである。
そこでワンマン経営のメリットを生かし、企業の永続的成長・発展を図るために、
『経営を冷静に見る眼をもつように努める』 『ブレインの育成・強化を図るように努める』
ことが肝要であると思われる。企業内部でのブレイン育成が困難であれば、例えばメイン銀行の経営相談所などの活用が考えられる。このようなワンマン経営者であれば、金融機関の信用と支援を受けるであろう。要は、意識と姿勢の問題である。
この2点が忠実に誠意を持って実施されるならば、先のような調査結果は出なくなるだろうし、ましってやそのような調査を受ける当事者に加わることもなかろうと思うのだが・・・。

