表記の見出しが今朝の日経5面に小さくありました。
住宅金融支援機構が提供する住宅ローンについて、新規借入者を対象に金利の引き下げや返済期間の延長などを検討するというもので、需要喚起→住宅・不動産市場下支えが狙いです。これは過去最大規模の住宅ローン減税を打ち出した首相の意向を踏まえたもので、ほかに業者向け資金繰り対策も講じられるようです。
この方針で想い起しますのは、10年前の政府の対応です。小渕内閣当時の経済対策に「住宅金融公庫等の融資に関し緊急に講ずべき対策について」(H10.10.23.)がありました。ここで打ち出された”何でもあり”の世界が貸し手にも借り手にもモラルハザードを引き起こし、社会問題化したことは記憶に新しく(詳しくは、こちら)、現在でも尾を引いているところです。
当時と今日ではいくつかの点で状況が異なり、単純には連想はできませんが。顕著な相違点は、対策の実働部隊である住宅金融公庫(当時)が住宅金融支援機構(以下機構)と独立行政法人化した点です。機構は、生き残り策を証券化支援事業に求めましたので、周知のとおり現在では民間金融機関に融資させた住宅ローン債権を買い取り証券化して、それを市場に売却しています。
機構は、信用リスク(与信に責任を持つ)を取りつつ、資金は市場から取り込みスプレッドビジネスをフィー化させるモデルにしたのです。上記の日記にも触れましたが、融資条件の緩和は不良債権の増加につながるとの私の懸念を前提にすると、今回の国土交通省の方針から将来的に起る問題は、どのようなことが考えられるのでしょうか?
貸し手サイドに立って考えると、条件緩和は、融資対象範囲の拡大=緩和前基準では貸し出せなかった人への融資が可能になることです。収入条件が緩和前と変わらず一定とすると、このことはいずれ返済遅延が表面化するのは時間の問題と見られ、キャッシュフローが立ち行かなくなり物件処分等での回収を借り手に促すことにつながることになります。
一方、借り手サイドに立って考えると、貸し手とは反対のことが言えるのですが、大きく違うのは、マイホームを取得した人は、返済に窮する事態になっても「何とか挽回できる」「自分たちだけは物件処分を免れられる」と他力本願的な望みにすがりがちになることが懸念されます。こうした根拠なき期待感が傷を深くしてしまうのです。
どちらから見ても、融資条件の緩和は、貸し手と借り手のモラルハザードを招き、社会問題化するの懸念が拭い捨てられません。
さて、機構は、条件緩和した住宅ローン債権を買い取り証券化しますので、緩和後の証券の原債権は、質的に緩和前より劣化したもので構成されている可能性が高く、引いては機構の信用リスクが高まることに繋がり、このことはいずれは格付けへのマイナス影響(格下げ)→証券化事業への影響(買い手減退)をもたらし、最終的には機構のビジネスモデルにも影響することになりはしないかと老婆心ながら気にするところです。
政策当局者や関係当事者には、今回の方針がいつか来た道に舞い戻ることのないよう、どうか慎重な検討をしていただくようお願いしたいものです。
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